企業はフリーアドレスを今からでも導入するべきなのか?
投稿日:2025.05.16 更新日:2025.05.15

フリーアドレスは諸刃の剣?
突然ですが、貴社ではフリーアドレスを導入されていますか?
フリーアドレスとは、従業員がオフィス内で固定の席を持たず、自由に好きな席を選んで働くことができるワークスタイルのことです。
コロナ禍以降従業員の出社率アップに伴いオフィスが手狭になってきたという背景もあり、「スペースの有効活用」や「他部門メンバーとのコミュニケーションの活性化」などを目的として大手企業を中心にフリーアドレスを導入する企業が増えてきています。
一方で、そのフリーアドレスが従業員のストレスとなり「固定席時代の方が仕事がしやすかった」「経営者はオシャレなオフィスにしてフリーアドレスを導入したら従業員が喜ぶと思っているみたいだが、大きな勘違いだ」などといった不満を口にする従業員がいることも。
最近では、某大手企業がフリーアドレスを廃止して固定席に戻すということを発表して話題になりましたが、多くの大手企業ではオフィス移転などを機に、フリーアドレスの導入を現在もなお進めているのが実態です。
さまざまなニュースや成功事例に触れ、フリーアドレスの導入を検討される企業が多いですが、一概にフリーアドレスの良し悪しにかかわらず、それぞれの会社の働き方に合わせることが重要なのでしょうね。
フリーアドレスとは?
それではここで、改めて固定席とフリーアドレスの違いを整理してみましょう。
- 固定席
従業員一人ひとりに固定の席が決められていて、毎日そこで業務をする - フリーアドレス
従業員が個々の固定席を持たずに、好きな席を選んで業務をすることができる
よく「フリーアドレスとABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)との違いは?」と聞かれることがありますが、ABWは「業務内容や気分に合わせて、オフィス外でも執務場所を選べるワークスタイル」を指し、フリーアドレスは「オフィス内で執務場所を選べるワークスタイル」を指すという点に違いがあると言えます。
最近では、従来通り従業員が固定席を持ちつつ、自宅やコワーキングスペースなど、外でも仕事ができる環境を整えている企業も出てきていますが、この動きは自社ビルを保有していたり、執務スペースや資金に余裕がある企業しか実現できず、坪単価が高い東京都内の主要ビル街などでは実現が難しいでしょう。
フリーアドレスの経営者側のメリットとは?
では次に、経営者側・従業員側のそれぞれの視点でフリーアドレスにするメリットを見てみましょう。
経営者側のメリット
1.スペースの効率化によるコスト削減
固定席をなくすことで、オフィススペースをより効率的に使うことが可能になります。また、必要なデスクや設備を最小限に抑えることで、設備投資のコストを大幅に削減できます。従来は各部署で1台ずつ使っていた複合機がフリーアドレスによって不要となり、台数を減らすことができるなど、かなり具体的なコストダウンにつながります。
2.コミュニケーションの促進によるイノベーションの創出
新しいアイデアやプロジェクトが生まれるためには、異なる視点や知識を持つ人々が出会い、コミュニケーションをとることが重要です。フリーアドレスは、他部署のメンバーなどとの偶然の出会いや共創を促進し、イノベーションを生み出す土壌を作ります。
3.従業員の柔軟な働き方のサポートと満足度向上
フリーアドレスやABWは、従業員が自分自身で働き方を選べるワークスタイルです。フレキシブルな勤務形態が求められる現代において、「すべてを会社に縛られない働き方」ができるという点で従業員の満足度が上がるでしょう。また、「従業員が楽しそうにイキイキと働いている姿」を入社希望者にアピールすることができるため、優秀な人材の採用にもつながることが期待できます。
4.Well-being(ウェルビーイング)
従業員が身体の健康に加え、社内でのコミュニケーションや心の健康を維持し、幸福度を実感しながら働くことは、生産性を高めるだけでなく組織の成長に大きな影響を与えると言われています。
フリーアドレスの従業員側のメリットとは?
経営者側と逆サイドである従業員側のメリットも見てみましょう。
従業員側のメリット
1.自分の意思で働く場所を選ぶことができる
その日の気分や自分の仕事のスタイルに応じて働く場所を選ぶことができるため、「大型モニターが設置してある机で仕事をしたい」「景色を眺めながら仕事をしたい」「自分にあったイスを使ってリラックスして仕事をしたい」など、自由度の高い働き方を実現できます。
2.嫌いな場所で働かなくて良い
空調が効きすぎていて寒い(もしくは暑い)場所で仕事をしなくて済む、会議室から漏れてくる声や音に耐えながら仕事をしなくて済むようになる、などといったメリットもあります。「場所だけでなく苦手な人の近くで仕事をしなくて済む」こともフリーアドレスのメリットだという声も、よく従業員から聞かれます。
3.他の従業員と仲良くなれる
完全固定席で部署ごとにまとまって座っている環境では、他部署の方とコミュニケーションを取る機会は極端に少なくなりますよね。
一方で、フリーアドレスの場合は、偶然横に座った従業員の資料を見たり電話で話す内容を聞いたりすることがきっかけで相手に興味を持ち、コミュニケーションを取り始めることが多くあります。もちろん、オフィスのレイアウト自体もフリーアドレスも適した形にリニューアルすることが望ましいですが、フリーアドレス化によって発生するコミュニケーションにより新しい視点や知識が共有され、組織全体の創造性や生産性が向上します。
フリーアドレスのデメリットとは?
このようにフリーアドレスのメリットは多数ありますが、メリットがある一方で意外な落とし穴も存在します。ここでは、フリーアドレスを採用する際に知っておきたいデメリットを5つご紹介します。
フリーアドレスのデメリット
1.席の確保が難しい
フリーアドレスでは決まった席がないため、出社時に希望の場所を確保できないことがあります。特に人気の窓際や静かなエリアは早い者勝ちとなり、朝から席探しにストレスを感じる従業員も少なくありません。
2.チーム内のコミュニケーションが減る可能性
固定席がないことで、チームメンバーと自然に顔を合わせる機会が減る場合があります。見える場所に部下がいないとマネジメントしづらいというマネージャーも一定数存在し、チームワークに影響を及ぼすことも考えられます。
3.私物管理が面倒になる
仕事をするたびに自分の荷物や書類、文具を個人ロッカーなどから移動する必要があるため、その準備が手間に感じられます。毎日同じ環境で効率的に仕事を進めたい人にとっては不便さが増すかもしれません。
4.集中力が低下する恐れ
他部署の方とコミュニケーションが取れるというメリットの反対にはなりますが、周囲の環境が日によって変わるため、騒音や人の動きが気になって集中できない場面もあるでしょう。静かに作業したい人にとっては、フリーアドレスの柔軟性が逆にマイナスに働くことがあります。
5.全従業員が賛成とは限らない
フリーアドレスの導入に対しては、そのデメリットに懸念を抱く従業員も少なくありません。実際、「フリーアドレスよりも固定席のほうが働きやすいと、従業員から反対の声が挙がった」という理由で、ご相談をいただくケースもあります。
フリーアドレスをスムーズに導入するためのポイントとやるべきこと
フリーアドレスを導入すればオフィスの柔軟性が高まりますが、「これまでの働き方と違うワークスタイル」を社内に導入しようとすると、抵抗を示す従業員がでてきたり、頭では良いと理解していても実際に導入が始まると混乱してしまったりするケースもあります。
以下に、スムーズなフリーアドレス導入のために気を付けるべき点と具体的なやるべきことをまとめました。
1.フリーアドレス導入の意義やメリットについて全従業員にきちんと説明する
目的が不明だと抵抗感が生まれやすくなります。なぜフリーアドレスを導入するのか、また導入のメリットはどのような点なのかを、しっかりと全従業員に説明する必要があります。
できれば最初に部門長か選抜メンバーに説明をして、その内容を自部門メンバーに展開してもらう、という順番が良いでしょう。
2.従業員がどこでも働ける環境をつくる
「はい、今日から全社でフリーアドレスを導入します」と急に発表をして従わせるのではなく、ABWやテレワーク、ペーパーレスなど、従業員がどこでも働ける環境をしっかりと整えたうえでフリーアドレスを導入しましょう。特に机上に書類や資料を山積みにしている従業員が多い企業では、ペーパーレスをある程度推進したうえでフリーアドレスを導入しないと、不満が噴出してしまいます。
3.フリーアドレスのワークルールとガイドラインを明確に設定する
席の取り合いや私物の放置などの混乱を防ぐことも大事です。
そのためには、席の利用時間の上限や退席時の片付けルールを定め、全従業員に周知を徹底しておきましょう。例えば、「このワークブースの連続使用は2時間まで」「使用後は書類や私物を必ず個人ロッカーに戻す」といったルールを設けると良いでしょう。また、「このスペースは予約無しで利用してOK」「ここは飲食OK」「ここはオンライン会議OKだが、イヤホン利用必須」など、ルールを明示しておくとわかりやすくなります。
4.十分な設備とスペースを確保する
従業員数に対して席や設備が不足すると不満が噴出してしまいます。
そうならないためにも、出社率を予測し、席数を1.2〜1.5倍程度余裕を持たせることや、Wi-Fiや電源、モニターなどのインフラを充実させ、どこでも快適に作業ができる環境を整えることが必要です。
5.コミュニケーションを補う仕組みを作る
フリーアドレスを導入してチーム間の交流が減ると連携が弱まることに繋がるため、注意が必要です。
オンラインコミュニケーションツール(Slackやチャットワークなど)を活用したり、対面での雑談の場としてカフェスペースやミーティングエリアを設けたりすることも効果的です。
6.私物管理を効率化する支援を行う
荷物の持ち運びが負担になると生産性が落ちてしまいます。
個人用ロッカーやキャビネットを用意し、必要な書類や道具をデジタル化してクラウドで管理できるようにしておきましょう。ペーパーレス化を推進するとさらに便利になります。
まとめ:フリーアドレスを導入してオフィス改革を進めましょう
フリーアドレスを成功させるには、経営者側やオフィス担当者のちょっとした心遣いと準備が欠かせません。わかりやすいルールを整えたり、快適な設備を揃えたり、従業員が自然と交流できる工夫をプラスすることなどが求められます。
コート類をかけておくスペースや休憩室の設置、出社していない従業員宛てに届いた郵送物の保管ルール決定など、フリーアドレスを導入すると「こういう点まで配慮して設備やルールを作ってあげれば、従業員は喜ぶかもな」という内容が次から次へと頭に浮かんでくることでしょう。
「こんな設備やルールがほしい」ということを従業員に聞きながら柔軟に調整することも大切です。そして、オフィス改革のゴールを従業員と共有できれば、きっとワクワクしながら進んでいけますよ。
清和ビジネスでは、これまでに多くの企業のフリーアドレス化のお手伝いをしてきました。
もし、ご興味がありましたらお気軽にご相談ください。
成功例・失敗例など、事例を基にご説明させていただきます。
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